食生活により痔を予防する方法

痔の発症および予防に、日常的な食生活が大いに関わっています。

ここでは痔になりやすい食生活についてそのメカニズムと合わせてご紹介。さらに痔になりにくい食べ物についても紹介し、予防するための方法を、説明します。

痔を誘発させる食材とは

「便秘」や「下痢」は、痔の症状を誘発させる原因となります。

たとえば、便秘等で便が硬くなると、排便の際、肛門に圧力がかかり、出口が切れてきれ痔になったり、肛門の血管が集まった部分がうっ血して、いぼ痔になったりします。便秘や下痢は、腸内環境の乱れが原因となることが多いです。

腸内環境は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類から構成されており、善玉菌が優勢であれば正常な状態が保たれますが、食生活の乱れが原因となり悪玉菌が増えることで腸の動きが阻害され、有害物質を含む老廃物が体内に溜まるようになり、便秘や下痢といった分かりやすい不調として現れてきます。

ここでは便秘や下痢を誘発させ、痔の原因となる食材とそれに含まれる成分についてご紹介します。

肉料理や脂っこい料理

肉料理に含まれる【タンパク質】や【アミノ酸】は筋肉を形成するうえで欠かせない栄養素であり、不足すると病気になりやすくなるなど重要な成分ですが、必要以上に摂取してしまうと体内にうまく吸収されなかった余剰分が悪玉菌のエサになってしまいます。

また肉料理など脂っこい料理に含まれる【脂質】もタンパク質と同様に悪玉菌のエサになる成分です。

砂糖を使った料理

調味料の1つとして欠かすことができない砂糖ですが、主要成分である【ショ糖】は悪玉菌の大好物になっています。腸内環境が整っていないうちは甘いものの摂取はなるべく控えるようにすることが望ましいのです。

タンニンを含む食材

果物の柿や、お茶などに含まれる【タンニン】は肌の引き締め効果や生活習慣病の予防となる成分であることで知られていますが、摂りすぎると腸の粘膜に特殊な膜を作り、腸のぜん動運動を抑制してしまう作用があります。

ぜん動運動の抑制は、便秘と直結するので要注意の成分と言えるでしょう。

香辛料を使った辛い料理

便秘や下痢とは別のアプローチで痔の症状を誘発するのがトウガラシなどに含まれる【カプサイシン】です。カプサイシンはきちんと腸内で吸収されずに、便に交じって排出される可能性が高い成分です。

肛門粘膜は刺激物に対して非常に敏感であるため、排便の際に炎症を引き起こしかねません。カプサイシン以外にも口に入れて辛いと感じる食べ物は、過剰に摂取しないように注意しましょう。

アルコールの摂りすぎにも注意!

痔のリスクを高めるのは食べ物だけではありません。【アルコール】をたくさん摂ると下痢の要因になる可能性も高いので、飲みすぎには注意しましょう。

痔の発症を予防する食材

便秘や下痢を引き起こし、痔を誘発する食材がある一方で、痔の発症を抑制する食材についても知らず知らずのうちに摂取しています。

以下に紹介するのは痔の発症を抑制する優秀な食材の数々です。

成分をきちんと理解し、バランスよく食事に取り入れて摂取することで、便秘や下痢とは無縁の生活を送ることができるかもしれません。

野菜や果物などの食材

ニンジンやキャベツ、トマトなどの野菜やリンゴやミカンなどの果物には、水に溶けるタイプの【水溶性食物繊維】のペクチン、イヌリン、フコダインやアルギン酸といった多糖類や糖タンパク質のムチンが豊富に含まれています。

腸内の善玉菌を増やす効果が期待でき、お腹の中でゲル状のやわらかい便を作る働きを持っています。

大豆やきのこ、根菜などの食材

大豆やきのこ、イモ類やごぼうなどの根菜、玄米やオートミールなどには水に溶けないタイプの【不溶性食物繊維】が豊富に含まれています。

不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収することで便のかさを増し、腸のぜん動運動を活発化させて便通を促進してくれます。

乳酸菌を含む発酵食品

発酵食品に豊富に含まれている【乳酸菌】は腸内を弱酸性にすることで悪玉菌の増殖を抑えると同時に、善玉菌を増やす効果が期待できます。

キムチやみそなどに含まれる植物性乳酸菌とヨーグルトやチーズなどに含まれる動物性乳酸菌やビフィズス菌などがあり、幅広い食材から摂取することが可能です。

オリゴ糖を含む食材

玉ねぎやアスパラガス、ニンニクなどの野菜類やハチミツなどに含まれる【オリゴ糖】は、腸内で善玉菌を増やすエサとなる成分です。

同時にミネラルの吸収も高めてくれるため腸内環境はもとより、便秘の改善を促してくれます。

腸内環境を整える飲み物も!

アルコールの摂りすぎは腸内環境に良くありませんが、腸内環境を良くする飲み物も存在します。

冷たい水は腸の活動が活発な朝の起き抜けに飲むことで腸を刺激してくれます。果物や野菜、ハーブを入れたデトックスウォーターにすれば、ビタミンや食物繊維も加わってなお効果的です。

寒い日や体が冷えている日は、温かいお湯を飲むと内臓が温まり胃腸の動きを活発にしてくれます。また二酸化炭素を豊富に含む炭酸水には硬い便を軟らかくする効果が期待できます。

食事をとる時間、回数、順番にも気を付けて!

腸内環境に良い食材を摂取する際には時間にも気を付けましょう。

仮に就寝前に食べ物を摂取すると、いくら食事の内容が良くても就寝中に自律神経が乱れを引き起こすなどして、結果的に便秘や下痢の原因となる免疫力の低下へとつながってしまいかねません。

朝・昼・晩の3食を、規則正しい時間に摂ることが、腸内環境改善への近道なのです。

またさらにもうひとつテクニックとして、食事を摂取する順番も気にかけましょう。

身体に良いだろうと優先して摂取してしまいがちな食物繊維ですが、すでに便秘の人の場合には、最初に食物繊維を摂取して後にタンパク質や炭水化物を摂ってしまうと、結果的に腸の働きが悪くなり、さらに便秘を悪化させてしまう可能性があります。

鈍っている胃や腸の働きを良くするためにも、まずは主食となる炭水化物から先に食べるようにしましょう。

痔と無縁な日々に食生活の重要性を知ったら

過剰に摂取することで便秘や下痢の原因となり得る成分と、それらを抑制する成分。

どちらも人間にとっては必要不可欠な成分であるためにバランスよく摂取することが大切です。

さらに摂取する時間や回数を規則正しく設定することも重要です。万が一、食生活の乱れが原因で痔を発症してしまっても、正しい食生活を維持しながら、速やかに治療にとりかかるようにしましょう。

記事監修:大阪大学名誉教授 薬学博士 小林 資正(もとまさ)略歴

大ぢ典 記事監修 小林先生

大阪大学薬学部を卒業後、米国オハイオ州立大学博士研究員、大阪大学薬学部助教授、教授、薬学部長を歴任。

元日本生薬学会会長、日本薬学会副会頭。

専門は生薬学・天然物化学。

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